プロが教える「効率的なペダリング」のために大切なこと




限りある資源を勝利に変えるために重要なキーワードは、効率です。無駄をなくし、資源であるパワーを効率よくスピードに変換しなければいけません。

(第1章CHAPTER1「パワーとは何か?」より)

このように語るのは、『宮澤崇史の理論でカラダを速くするプロのロードバイクトレーニング』(宮澤崇史著、日東書院)の著者。高校卒業後に自転車競技をはじめ、日本のみならずイタリアなど世界のレースで活躍した人物。その著者が自身の経験から、よりロードレースで速く走るための方法を理論的にまとめたのが本書です。

今回は、これまでトレーニングを積んだことのないロードバイク乗りの方が興味のある「より速く走るための効率的なペダリング」に注目してご紹介します。

「骨で押す」

筋肉ではなく、骨でペダルを押すのです。力を入れなければ硬くならない筋肉ではなく、力を余さず伝えてくれる、硬い骨を利用する。筋肉を使うと疲れますが、骨で押せば力を使わずに済むためです。

(第1章CHAPTER3 「骨で押す」より)

自転車を乗るとき、多くの人はペダリングの際に腿周りの筋肉を使います。その証拠に、普段よりも負荷を上げてペダルを漕ぐと、腿周りの筋肉が張ってくることが分かると思います。著者は、ペダリング時は筋肉を極力使わないことを推奨しています。その理由として、筋肉を使うとそれだけ疲労が蓄積し、長時間のペダリングが困難になってしまうことを挙げています。

では、筋肉を使わずに何を使うのか。それは「」です。骨を使う、というのがピンとこない方も多いと思いますが、イメージとしては「棒でモノを押す」ような感じです。筋肉の場合、一度筋肉を硬直させてペダルを筋肉で踏みこむ(押す)ことになります。骨で押す場合、もともとの硬いモノを「体重」の力でペダルを踏みこみます。どちらがより力を使わずにペダリングができるかは、なんとなくイメージができるのではないでしょうか。

もちろん骨で押すと一言で言っても、一朝一夕に体得するのは難しいです。骨と体重をうまく使うよう、ペダリングの際は常に意識してトレーニングを積みましょう。

腸腰筋で腿を上げる

腸腰筋は、それほど大きな筋肉ではありません。だから、大腿四頭筋のように大きなパワーを出すことはできません。しかし腸腰筋は、小さいパワーを継続して出すことは得意なのです。つまり、ペダリングの際に脚を上げるために最適な筋肉が、腸腰筋なのです。

(第2章CHAPTER2 「腸腰筋で腿を上げる」より)

普段のペダリングで無意識に使われているのは「大腿四頭筋」や「ハムストリング」といった筋肉です。これら筋肉は力強い反面、持続力がありません。自転車のような、長い距離を長い時間ペダリングする場合、持続力が必要になります。その持続力を持った脚の筋肉が「腸腰筋」です。

この腸腰筋、どのように使うかというと、「腿を上げる」ために使います。なぜ腿を上げるのかというと、ペダリングの際、踏み込む足の反対足はペダルに乗せたままではありますが、その重さの分だけペダリングに負荷がかかります。その負荷を軽減するために、腿を上げる必要があるのです。

ペダリングでは、ここまでお話しした「体重と骨を使って踏み込む」「腿を上げてペダリングの負荷を最小限にする」という2点が重要になると述べています。骨で押すことで、踏み込みにはほとんど力を使いません。そして、持久力のある腸腰筋で腿を上げる。この省エネの組み合わせによって、長時間のペダリングを実現できるようになるのです。

ペダルは1時から踏む

時計の1時から5時まで踏めば、4時間分の間、ペダルに力を賭けられます。左右で8時間分です。しかし、3時から7時でペダルに力を加えたとしても、5時以降の力は推進力にはなりませんから、自転車を前に進ませているのはせいぜい2時間分程度です。

(第2章CHAPTER2 「ペダルを踏み遅れない」より)

何時方向の時に、ペダル踏み込みの力を入れるのか。これはよく議論に挙がりますが、著者のおすすめは「1時~5時」です。これは、体重をかけたときに一番力が入るポイントになるためです。それ以外では、筋肉を使うことになり、疲弊を早めてしまいます。

筋肉でペダルを漕ぐ場合は、1時~5時に力を入れることがそこまで難しくはないのですが、骨で押す漕ぎ方の場合は少々難しくなります。いずれも、低速状態で感覚を掴んでから、徐々に速度を上げていくようトレーニングしていくことが必要になるでしょう。


もっと走りたい!と考える自転車乗りの方は多いと思います。しかし、どうすれば速くなるのかを考えたときに、どうしても機材を良くする方向で考えがちです。しかし、著者も綴っていますが、機材はさほど関係がありません。速くなる最大のポイントは、搭乗者自身の効率的な自転車さばき(という言葉で括っていますが、ペダリングやポジション取りといった総合力)であると言っても過言ではないと思います。

今回ご紹介したポイント以外にも、パワーメーターを使ったトレーニング方法や、身体を使いこなすためのメニューなどの情報が盛りだくさん。速く走りたいと思う方は一度読んでおくべき一冊といえるでしょう。